岡田版「白い巨塔」(2019)酷評の理由、唐沢版(2003)の再評価の機運高まる。

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岡田准一さん主演の白い巨塔が5夜連続で放送されました。その感想はよくやったというものもありましたが、唐沢版と比較すると「いまいち物足りない」「薄っぺらい」という声があがっていた事も事実です。

今回は、なぜ岡田准一さん主演の「白い巨塔」がいまいち物足りないという感想があがっているのかを深掘りしていきます。

いちいちセリフにしているところに深みがない。

今回の白い巨塔を見ていて思ったのは、役者が心情や状況をいちいち言葉にするという点です。日本には沈黙は金なりという慣用句があるように、「黙る」という美徳があります。

唐沢版の白い巨塔については、役者の表情や機微をカメラワークなどを駆使して、察するという行間のカットが多く、視聴者として想像力をかきたてられました。

特に印象的だったのは、唐沢版「白い巨塔」の東教授の最初の総回診のシーンです。大阪府知事の手術を成功させた財前を称賛している週刊誌が患者がベッドサイドにありました。

そして、担当の看護婦がその週刊誌を東教授の目に触れないように、回診前にひっくり返して隠すシーンなどを挟みこむことで、うまく劇中の人間関係を視聴者に感づかせていました。

対して、今回の岡田版の白い巨塔はなんでも説明のようなセリフ回しがはいり、なんでも言語化してしまう直言的なストーリーになっている印象でした。

現実ではありえないやり取りも多い。

今回、岡田版の白い巨塔のシーンでは圧倒的に現実離れしたシーンが多かったように思います。

まず、冒頭のシーンの滝村恭輔教授(小林稔侍)の喜寿を祝う会では、主役の名誉教授が控室でピエロのようなメイクで登場していました。

現実問題として、自分自身の喜寿を祝う会の控室において、ピエロメイクをして待機している名誉教授がいるのでしょうか。仮に辞退を申し出るような偏屈な教授先生であれば、最初から喜寿を祝う会を辞退しているのが普通です。

名誉教授がピエロメイクというあまりに、現実離れしたシーンから始まった違和感を持ったままドラマを見始めることになりました。

岡田版・財前五郎が上司に対して無礼すぎる件

今回の岡田版・白い巨塔で感じたのが、岡田版財前が上司の東教授に対して現実離れした無礼な態度をとっていた件です。普通ではありえないような態度をとっていたため、「あぁこれはドラマなんだ」ということを実感させられ、いまいち感情移入ができませんでした。

具体的な例として、まずは第一話において財前が東教授と対面して患者の話をする際には、部下である財前が上座に座り、足を組むという失礼な態度で上司である東教授と接していました。現実世界のおいて、自分の直属の上司と話す部下が足を組んで対峙するということは有り得ません。

第二話においても、東教授が手術中に患者の血液が顔にかかり朦朧して、執刀医が財前に変わるシーンにおいても、体調が悪くなった東教授は手術室にずっと朦朧としたまま椅子に腰掛けて待機していました。

普通、体調が悪かったりアクシデントがあった場合には、回復を優先して休憩室に行くのが普通ですし、周囲の看護師たちも権力者である東教授の顔にかかった血液を拭こうとしません、なぜ周囲がエスコートしようとしないのかも疑問です。

その後に、財前は東教授に対して「教授の椅子にしがみついているあなたは潮時だ」などと直言するシーンなどもあります。

普通、上司に対してそんな失礼な発言をしたら一発で左遷です。

ちょっと、世間知らずの人が書いた脚本だったと言わざるを得ません。対して、唐沢版の財前五郎は、現実世界でもこうなるという納得感のあるシーンばかりで、かなり地に足がついた脚本だったという印象です。

無意味なカットが多く飽きる。

財前五郎が水泳をしているシーンや、病院内でかけっこするシーン、プール内で愛人のケイコと戯れるシーンなどは必要だったのでしょうか。

また、手術シーンなども無駄に長く、見ていて本当に必要なのかと思わせるシーンが多かったのも事実です。

フジテレビ放送時には、21話のロングランだったドラマを、たった5話にまとめるのであれば、もっともっと表現すべきシーンが有ったはずです。

音楽もチープな印象

唐沢版の白い巨塔では、深みのある重厚感のあるオーケストラのような音楽が終始ドラマを彩っていました。

しかし、岡田版の白い巨塔はどこかコミカルでコントのようなチャカチャカしたBGMが多く、あまりドラマに深みを感じる事ができませんでした。

岡田版・財前五郎は常識がないただの幼稚な人物像

ネタバレを含みますが岡田さんの演じた財前五郎は、国立大学の教授という役柄です。選挙戦や仕事などでも、圧倒的な大人の力を駆使して成り上がっていくという役柄です。

唐沢版の財前五郎には、大きな組織の中でうごめく人間模様を感じるような品格がありました。時には、部下のミスを冷静な判断でなんなくフォローし、手術後の部下の労をねぎらうために、自分の財布からお金を抜き出し慰労会にあててくれと医局員の佃にわたすなど、医局員たちは尊敬する財前の為に頑張ろうと一致団結していたように思います。

しかし、岡田氏が演じた財前は幼稚な行動・振る舞いが多く、圧倒的に「渋さ」「深み」が足りませんでした。第四話の柳原医局員を、感情的に怒鳴りつけたり、わざとらしい笑顔でカルテの改ざんを迫るシーンなども、とても教授と医局員のやりとりを思わせるシーンではありません。

また、岡田版の財前五郎は歩き方や仕草などもただ威張っているように感じるわざとらしいものが多く、もっと自然な立ち居振る舞いをしたほうが世間の共感を得られたのでないでしょうか。

第二話の手術終わりにゴム手袋を引っ張って子供が輪ゴムを飛ばす遊びのように投げ入れるシーンも、幼稚さを感じさせるものであり、現実的な国立大学の医師がおこなう行動だとは思えず、終始唐沢版財前のような感情移入ができませんでした。

亀山の旦那は傷害罪か

裁判の係争中に財前又一と弁護士が、自分たちに不利な証言をする患者の担当看護師だった亀山君子の証言を口止めするために、亀山君子の旦那の職場を訪れるシーンがありました。

そこで、財前又一が口止め料の入った封筒を渡そうとした結果、亀山君子の旦那が財前又一の胸ぐらを掴んで引っ張るというシーンがありましたが、まずありえません。

弁護士の前であんな暴力行為は、絶対にトラブルになります。

特に、亀山君子の旦那の勤め先の親会社が世話になっている弁護士という前置きがある以上、そのような冷静さを欠いた行動をした場合、亀山君子の旦那は職を失う可能性もあります。

”曲がったことが嫌いな真っ直ぐな旦那の怒り”を理由として、亀山君子が裁判での証言を決意するあたりも、旦那が怒っているからという極めて「感情的で稚拙な動機」だったことも物語を軽薄なものにしています。

白い巨塔というよりブラックペアンよりか。

少し前に、ジャニーズの二宮和也氏が演じたブラックペアンというドラマがありました。

ブラックペアンも、とても現実的ではありえない設定のオンパレードでしたが、今回の白い巨塔においても現実離れした設定・シーンが多かったのも印象的です。

第五話の財前五郎の病院に愛人のケイコが電話をしてきて「別れ話の続き」を促すシーンにおいても、なぜケイコは手術が終わった抜群のタイミングで電話をしてこれたのでしょうか。

普通、スマホ全盛の時代に、大人の世界の愛人が、職場にまで干渉して電話をしてくるという事は現実的ではありません。

また、財前が死んで手紙を読み終わった後に、財前が病室で里見と向かい合っているシーンでも、死んだのでは?というクエッションマークが浮かんできました。

“岡田版・財前”の評価とは。

岡田版白い巨塔は全話において視聴率が良かったとの記事がありましたが、これは唐沢版の白い巨塔を見ていた視聴者層がリメイク版がどうなのかを期待して見ていた結果だと感じています。

つまり、岡田氏の財前五郎が評価されてたわけではなく、根強いファンが多い「白い巨塔」という作品がどのような形でリメイクされているか見届けようという、いわば「白い巨塔」ブランドによってもたらされた数字なのではないでしょうか。

Twitterの意見など

まとめ

唐沢版・白い巨塔を制作開始する際に、原作者の山崎豊子さんは難色を示していたといいます。しかし、唐沢さんが財前を演じ終わった後に称賛したといいます。

もし、山崎豊子さんが生存していたとしたら、今回の岡田版白い巨塔にどのような評価を下したのか気になるところです。

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